張りすぎず、緩みすぎず

安養寺では静けさの中に、
鈴虫やコオロギの音が鳴り響き、
日増しに秋の深まりを感じています。
 
世間が寝静まっている早朝に、
少しひんやりとした空気の中で、
坐禅や散歩をするのが私は好きです。
 
早朝5時頃から
本堂の扉を開け放って、
風を感じながら坐っていると、
 
辺りが暗闇から徐々に
瑠璃色に変わりはじめ、そして
色とりどりの自然が姿を現わします。
 
明るくなるにつれて、
少しずつ暖かくなり、
小鳥のさえずりが聞こえ始めます。
 
私は呼吸に意識を向け、
頭に浮かぶさまざまな雑念を
一つずつを手放していきます。
 
そして、
今この瞬間の呼吸に意識を向け、
自然の中に溶け込むようにして、
ただ自然の変化を全身で感じます。
 
私は日頃から、
頭や身体を使いすぎたり、
力みすぎる傾向がありますが…
 
自然を感じながら、
心地よく坐っていると、
おのずと力みが抜けて、
自然体に戻ることができます。
 
真夏の暑い時期に、
やむをえず身体にも心にも
かなり負担をかけてきました。
 
私にとって、
この時期の早朝瞑想は、
心身の調和を取り戻すのに、
欠かせない取り組みでもあります。
 
日常生活や仕事においては、
無理を承知で取り組まざるを得ない
ことがあります。
 
やむを得ない事情があったとしても、
一息ついた時には、しっかり心身の
メンテナンスをすることが大切です。
 
ギターなど弦楽器では、
弦の張り方で音色が変わります。
 
弦を張りすぎても、
弦の張りが緩みすぎても、
良い音は出ません。
 
張りすぎず、緩みすぎず、
絶妙の張り具合の時にこそ、
心の琴線に触れる音色を奏でます。
 
心と身体も同じように、
絶妙の張り具合の時にこそ、
最高のパフォーマンスを見せます。
 
また、たとえ
弦の張り具合がほどよい具合で
あっても、使っているうちに、
緩んだり切れたりするものです。
 
私たちの心と身体も同じく、
調子の良い日が続いているようでも、
疲れがたまったり、年齢とともに
無理がかかっていることもあります。
 
そして突然、調子が崩れたり、
様々な問題が生じることがあります。
 
そうならないためには、
日頃から心身の手入れを
こまめにすることが大切です。
 
あなたの心身の張り具合は
いかがでしょうか?
 
適度な食事量
適度な運動量
適度な仕事量
適度な遊び時間
適度な睡眠時間
適切な人間関係など…
維持できているでしょうか?
 
私にとって早朝瞑想は、
心と身体の調和を取り戻す
大切な要素の一つとなっています。
 
あなたにとって、
心と身体の調和を取り戻す
時間や場所はあるでしょうか?
 
もしなければ、
探してみてはいかがでしょうか?

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◆執筆者プロフィール◆ 
 井上寛照
 医王山安養寺住職
 高野山金剛峯寺阿字観能化
 サイモントン療法認定スーパバイザー
 MBSR (Mindfulness-Based Stress Reduction) Teacher
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