因と縁

物事が成就するためには因と縁の二つの要素が必要であると仏教では説きます。因は直接原因、縁は間接原因(環境条件)を表しています。

草花に例えてみると、種が因(直接原因)、周囲の環境条件が縁(間接原因)といえます。

草花が発芽するためにはまずは種が必要です。仮に種が干からびてたとすると、周囲の環境条件がどんなによくても発芽することはありません。また、種があっても、適切な土壌、適度な水分、適度な光や温度など、絶妙の環境条件が整わないと発芽することはありません。

安養寺の裏には古池がありますが、ここ10年間ほどは水が干上がってました。数ヶ月前に庭師に古池周辺の草木の手入れをしてもらい、古池の底に厚くたまった泥を掻き出してもらったところ、湧き水が出てることが分かり、再び水が貯まりました。

その後は手を入れずに様子を見ていたところ、スイレンやコウホネなどが芽を出し、水面に葉を広げ始めました。土の中に眠っていた種が環境条件が整って発芽したのでしょう。早々と花を咲かせたものもあります。また、モリアオガエルの鳴く声も久しぶりに聞こえました。

因と縁の関係は、私たち1人1人にも当てはまります。私たちが物事を成就するためには、まずはしっかりとした意志を持って、目標や計画を立てて行動に移すことが必要となります。本人の意志が干からびた状態では前に進むことはできません。

しかし、本人の意志や努力だけではなかなか結果に結びつかないことがあります。家族や友人や周囲の人々の理解を得て、家庭や学校や会社や地域社会の協力が得られて、時勢などタイミングがマッチして、機が熟したときにはじめて結果に結びつくといえます。

私たち一人一人が因(直接原因)になることもあれば、誰かの縁(間接原因)になることもあります。もし物事がうまく進まないことがあるならば、因と縁という視点で原因を探ってみると良いかもしれません。

近年は、都市部においても田舎においても人間関係が疎遠になっている傾向があります。しかし、人と人が支え合ってこそ人間社会は成り立つものです。また、人間社会と自然界の調和が保たれてこそ、住みよい人間社会を維持していくことができます。

日本には奥深い伝統文化があり、日本人のみならず世界中の人々が魅力を感じている側面もありますが、一方で、時代に合わなくなった価値観や組織に縛られ、そこから離れようとして人間関係が疎遠になっている負の側面も見受けられます。

尊い伝統文化に敬意を払い、引き継ぐべきものは引き継ぎつつ、時代に合せて価値観や組織のあり方を見直し、人と人が良い縁で繋がる日本社会を再構築していきたいものです。

◆執筆者プロフィール◆
 井上寛照(僧侶/心理療法家)
 医王山安養寺代表役員/住職
 サイモントン療法認定スーパバイザー
※隔週で仏教講習会瞑想実践会を開催してます。